千葉簡易裁判所 昭和43年(ハ)150号 判決
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〔判決理由〕一、本件当事者間において、本件の畑地(宅地)売買の事実、即ち八千代市大和田新田字仲木戸前一一五二番の畑地を、区割りして宅地として分譲し、原告に甲地を売渡した点は被告の認めるところである。
二、本件宅地分譲に当り、その分譲地である甲地から公道への出入通路として、乙地の部分に通行地役権が設定されている事実又は設定することを前提として、本件売買契約が締結されたか否かの争点につき考えみるに、<証拠>を綜合してみると、原被告間において甲地売買に当り、原告小林ミヤの代理人である訴外小林浩と、仲介者訴外船越光郎が、被告に通路として乙地を通行使用して公道へ出ることを確かめたこと、被告は通路として乙地の存在と、その通行使用を許容し確約した事実が認められる。なるほど契約書自体の文面上は、この点に関し何等の取定めがなされていないが、これは被告が乙地通路の存在は、公道同様のもので、永久的なものである、との言明を信頼して、特に通行地役権設定条項が、契約書に記載されなかつたに過ぎない事実が認められるところである。即ち原被告間において確約された、乙地の通行使用に関する取定めは、民法第六章による地役権に該当し、甲地を要役地として乙地を承役地とする、無償の通行地役権設定契約が、口頭で締結された事実が認められる。右認定に反する証人高橋シヅ、被告本人尋問の各結果は措信しない。
三、乙地上に原告主張の被告所有の木造物置小屋一棟と(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の各丸太杭の設置されている事実は、被告の争はないところであつて、右物置、丸太杭と乙地上の樹木等が乙地の通行使用につき、その障害物と認められ、その収去を要するかの点につき考えてみるに、当裁判所の検証の結果によれば、乙地は巾員約四米であつて、当今の社会状勢からして自動車による通行は一般的に必要であるばかりでなく、常識化されている現在の状況にかんがみて、特殊な場合以外は単に人の歩行丈が確保されるだけでは今日の通路とは認め難いばかりでなく、火災時の消火活動等をも考慮し、右通行地役権設定当時右物置小屋、丸太杭が、当初から存在しなかつたものでもあり、又原告が乙地を畑地として利用し、農作物を植付け栽培するなどの農耕の実施は、通行地役権の承役地としての乙地の使用上支障を来すものであると認められるから、乙地上に現存する右物置小屋、丸太杭と農作物は被告においてこれを収去して通行地役権の行使を妨害しない義務があるものと認定するのが相当であるが、乙地上に現に存在する樹木は普通の用法による通行地役権の行使の支障とは認め難いから、その収去を求める原告の本訴請求の点は失当である。その他乙地上に現存しない、建物、塀、生垣とかその他の工作物や樹木、園芸植物、農作物等通路の障害となる物を将来設置殖栽することは、本件通行地役権の完全な行使に支障を来すものと認められるところであるから、この点についての原告の本訴請求もまた理由がある。
四、通路としての乙地以外に、公道に出られる他に道路があり、その道路によつて甲地所有者である原告は、公道と交通すべきものであるとの被告の主張事実につき考えてみるに、証人鈴木なをの証言と当裁判所の検証の結果によると、なるほどその主張のような道路らしき外形の、人の通行している私道は、認められるところであるが、原告の本訴における通行地役権の主張は、原被告間に前示認定のような通行地役権の設定行為に基くその確認を求めるものである以上、他に公道との通路の有無に拘わらず、乙地を承役地とする通行地役権を認定することは、何等法律に牴触せず、公の秩序に関する規定にも違反しない限り、是認せらるべきものであるから、新たに通行地役権の設定を求める場合と異り、右主張はその主張自体判断に価しないところである。(秋本尚道)